Late Blooming Story

占いに行くたびに「大器晩成」と言われ続け、未だその時期を待ち続けるアラサー独女の日々の出来事を綴ります。

『作戦会議』

「私はどうすればいいの?」

コハルは緊張した表情で身を乗り出し、目の前に広げられた空港の図面を見つめた。ハヤトは組んでいた腕を解くと図面に伸ばし、国際線のターミナルを指先でトントンと叩いた。

「コハルはここだ」

「でも……コハルは顔が知られてるんだぞ?整備士のユニフォームならコハルも着られるし、こっちのほうが安全だろ。顔が知られてるのは俺も同じだし、俺とコハルのポジションは変えたほうがいいんじゃないか?」

不安げな様子でタクミが口を挟んだ。が、ハヤトはそれを冷静に遮った。

「今回の場合、ここはコハルのほうが動きやすいと思う」

コハルはハヤトを見つめ、次の言葉を待った。

「コハルは確かに顔が割れてる。向こうもコハルがターミナルに姿を現したら必ずマークするだろう。コハルには1分置きに俺とタクミにLINEを送ってもらう。腕時計を眺めながら何度もスマホをいじる様子は、ヤツらから見れば何らかの企みに見えるだろう。警戒するに違いない」

説明をしながらハヤトは机にスマートフォンを3台並べた。もちろん今日のためだけに偽名で取得したものである。

「相手はたった2人だ。ひとりは必ず警察と一緒だから、残りのひとりをコハルに引き付けることができれば俺たちは難なく作戦をこなせる」

「そりゃそうだけど……それじゃコハルは囮ってことだろ?やっぱり危なく思えるけど」

タクミの言葉にコハルも小さく唾を飲み込んだ。

「囮になってもらうのは悪いと思う。けど、だからこそコハルのほうが良いと思う。良いというか、万が一ヤツらが監視だけじゃなく直接確保しに来た場合、俺やタクミよりもコハルのほうが逃げやすいと思うんだ」

ハヤトはふたりの目を見つめて説得した。

「国際線のターミナルは周りに人がたくさんいるし、テロ対策で警備の数も多い。直接接触してきたらコハルは大声をあげて助けを求めればいい。向こうは大人の男でこっちは学生、しかも女だ。悲鳴を聞けばまず周りの人たちはコハルを被害者だと思うだろう。向こうは無理に手は出せないはずだ」

「武器で脅されるかもしれないだろ?」

「それこそただの脅しでしかない。向こうは表向き警察と協力体制を取っているし、ナイフだろうが銃だろうが、コハルの背中に突きつけることはできても人混みの中ではまさか使えない。とにかく直接接触されたら大袈裟に声をあげて騒ぎにしてしまえば、周りの視線全部が盾になる。警備が駆けつけて保護でもされたら、痴漢かと思ったけど勘違いだったとか言ってターミナルから逃げるんだ」

「私のほうが動きやすいっていうのはそういうこと……」

逃げていい、という自分の役割にコハルはホッと息を吐いた。それを見てハヤトは改めて計画の説明を始めた。

「空港への到着は14時。14時半までにそれぞれ配置につく。タクミは監視カメラを避ける必要があるから、ルートはこの図面で正確に覚えるんだ。14時半からコハルは1分置きにグループLINEにメッセージを送って。内容はなんでもいいから、必ず1分置きだ。俺とタクミはコハルからの着信を数えて10回目、つまり配置についてから10分後に作戦開始」

タクミはなるほど、とハヤトが机に置いたスマホをひとつ手に取った。

「コハルからのカウントが途中で途切れたら、その時点でタクミは無線妨害のスイッチを入れてくれ。数秒のズレはあるだろうけど、俺もほとんど同じタイミングで動けるはずだ。コハルは1分置きのLINEを10回送信し終わったら、もう1分後に2回続けてLINEを入れてからターミナルを出て電車で先にここへ戻る。向こうが接触してきてカウントの途中で逃げることになったときは、1分置きとか気にせず2回連続LINEを入れる」

得心した顔でコハルもスマホを取り上げた。

「わかった。とにかくターミナルを離れるときは2回連続ってことね」

コハルに頷きで返すと、ハヤトは続けた。

「無線妨害には管制塔がすぐに気づくだろうから、スイッチを入れたらタクミはすぐにその場を離れてくれ。コハルに直接敵が接触してこなかった場合はタクミが狙われる可能性がある。整備士の制服では目立つだろうが、逃げるときには人目につく場所を選んで歩いて駐車場へ」

言いながらハヤトは図面上を指で辿り、逃走ルートを示した。

「敵に接触された場合はコハル同様、騒ぎにするんだ。警備が来たら制服着てるのが引っかかるだろうけど空港マニアのコスプレで通せ。身分を改められても紛れもなくただの学生なんだから、コハルほど簡単ではないにしても逃げられるだろう」

「オーケー」

タクミは覚悟を決めた顔で頷いた。

「国際線でのトラブルは必ず警察が介入してくるし、そうなればヤツらもひとまず諦めざるを得ない。ヤツらの狙いはあのアタッシュケースだ。中身を公表されたくない以上、俺たちのことを警察に話す心配もまず無い」

部屋の隅に置かれたアタッシュケースをハヤトが顎で指すと、タクミとコハルも無言で見やった。

「時間稼ぎにしかならないけど……今日のところは、それで俺たちの勝ちだ」

ハヤトはそう言い切ることで自身の不安を追いやった。既に追い詰められているも同然の状況である。逃げたところで解決しないのであれば、危ない賭けでもとにかく進むしか道は無いのだ。



+++



突然何?と思うでしょうけれど。こうして何らかのストーリーの、ある一場面だけを妄想するのが好きなんです。こうして文章にしてみたことは初めてですが。昨日お風呂に入っているときに思いついたので書き出してみたのですが、思っていた以上に難しいです。映像が先だからかな…

今後も書きたいと思ったときに突然書くかもしれません(何












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